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スタッフブログ

マラソンとグルメ

2019/12/03

 

11月初旬、山形県にて天童ラフランスマラソン(ハーフマラソン)出走してきました。東北は早くも紅葉の季節、天候にも恵まれました。早朝は霧が出ていましたが、太陽が昇るとともに気温も穏やかとなり、まさにマラソン日和です。会場の山形県総合運動公園内でアップでイチョウの黄葉した落葉を踏み踏みしながらのジョグ、なんと楽しいのでしょう。天童ラフランスマラソンでは、すべてのエイドステーションで、ラフランスはもちろんのことリンゴその他のフルーツがテンコ盛りで、しかも食べ放題!(これが目当てでエントリーするランナーもいるらしい)、太っ腹、さすが果樹王国山形。
といっても記録重視で走っているランナーには関係ありません。私も、ラフランスを横目でみつつも、いつも通り、水やスポドリで水分補給しつつひた走るのみです。せっせせっせと果樹園が続くアップダウンのあるコースを駆け抜けます。おばあちゃんが沿道に出した椅子に腰かけて、孫を抱っこして応援している。『がんばれ』と書かれたプラカードを持っておじいちゃんがニコニコしている。都会ランもいいけど、こういう牧歌的なコースもまたいいな。今のところPBを大幅に上回るペース。いいぞ、この調子、ラフランス食べるのはあとあとの走り終わってからの楽しみにしようねと自分に言い聞かせました。さて残るところあと2㎞の19㎞地点で、最後のエイドステーションが視界に入りました。おじさん達がランナー達に大声で呼びかけてます、(カニ食べてけー。毛ガニもなんとかガニ(よく聞き取れんかった)もあるよ~)旗が立ってて、網走市とあります。どうやら天童市の国内総合交流協定都市みたいです。(あとからこれがまたこのマラソンの名物とも聞いた)。えっ、カニ?、思わず、ステーションめがけて真横へカニ走り。。。トレイに盛られたカニをモグモグしたところ、いい塩加減だ、美味。ランにもどったところ、別のテーブルが用意されていて、こんどは毛ガニだと。またカニ走り。。。またもや美味。ランにもどって、こんどは水も飲みたくなり、またカニ走り。。。あわてて飲んだので咳き込み口から泡吹くようなありさま。ああ、でも、これで間違いなく10秒はロスしたな。残るは下り基調でゴールへまっしぐら。おかげさまで9月に出したハーフのPBを8分も更新。カニでタイムロスは惜しかったけど、食べなかったらもっと後悔するもんな。
ゴール後は、芋煮→ラフランス→ラフランスのソフトクリーム→芋煮のコース、十分山形の名産堪能いたしましたよ。普段我慢している甘い物や炭水化物系、どうしてもマラソン後は食べたくなるんですね。写真は天童市のスタジアム周辺をラフランス食しながら歩き回っているところです。左親指の爪には、コース途中の登りの地点をあらかじめ書き込んだのがかすかに残っています。よくビールを大会会場の出店で美味しそうに飲んでいるランナーも見かけますが、小生は、ハーフ完走直後には、なかなか飲む気がしません。きっと体が欲しているのはアルコールではないのでしょう。
ところで罪を告白します。芋煮はランナー一人一杯ずつと決まっているのに、あまりの美味しさに、何食わぬ顔して横入りし、ずるしてもう一杯おかわり頂いてしまいました。大会関係者の皆さま、おテントウさま、この場をお借りして、お詫び申し上げます。実に大人げないですな。

 

さて、帰路に着くべくイチョウ並木をまた歩きながらシャトルバスへ向かう途中、ふと、そういえば、普段ランニングしている、いつものイチョウ並木と違って、あの特徴ある銀杏の種子の匂いがしないなと思いました。イチョウは雌雄異株であることはよく知られています。元々中国原産の裸子植物であり、イチョウ科の植物の中で唯一現代まで生き残り、『生きた化石』とも言われています。日本にも伝搬されて、火が付きにくいことから、寺社などの参道にもよく雄株が植樹されたといいます。ただしイチョウは雌雄のバランスをとるために自然に性転換を起こすことも知られていて、古代から生き残っているだけあってなかなかタフなものですね。ここまでは以前から知っていたのですが、イチョウについてすこし調べてみました。やはりイチョウ科の植物は中生代から新生代にかけて繁栄した植物ですが、氷河期にほぼ絶滅し、イチョウは唯一現存する種であるようです。英語ではmaidenhair treeといい、葉の形が女性の陰毛が生えた部分を前から見た形に似ているためとも説明されています。春に新芽が伸び開花する。風媒花で、1㎞程度離れていても受粉可能なのだそうです。受粉した花粉は、雌花の胚珠の花粉室に数か月保持され、その間に胚珠は2㎝程度に肥大し、花粉内では数個の精子が作られる。9-10月頃、精子は放出され、花粉室から造卵器に泳いで入り、ここで受精が完了する。受精によって胚珠は成熟を開始し、11月ごろに種子に熟成する。被(果肉)は軟化し、カルボン酸類特有の臭気を発する。(ウィキペディアより抜粋)これがあの臭いですね。この臭い、きっと恐竜をはじめとするさまざまな動物を引き付けたのでしょう。食べてもらって各地で糞をしてもらわないとイチョウは生き残れませんから。ちなみのこのカルボン酸、少し手を加えると、すばらしい香料に生まれ変わるそうです。臭いの世界も実に奥が深い。

 

しかし、植物の中にも精子をもつことがあるのですね。これは驚いた。じつは、植物学会では苔やシダ類は、古くより精子が存在することはよく知られていたようで、それ以降の起源の植物には精子は存在しないとということが長らく常識とされていたようです。ところが、裸子植物のイチョウ、続いてソテツにおいて精子が存在することを発見したのは、明治期における日本の植物学者たちであり、これは当時世界を驚かす出来事であったようです。発見のきっかけとなったイチョウの樹は東京大学小石川植物園に現存するようです。昔近くの千石(せんごく)に住んでたことあって園内を散歩したことも何度かあるが気が付かなかったな。顕微鏡を使用しての、気の遠くなるような詳細な研究。大変だったろうな。

 

ところで、動物の精子を初めて観察した人は、顕微鏡の発明家であるオランダのデルフト生まれのレーウェンフックという人です。17世紀のオランダ、黄金時代ですね。彼は生涯にわたって、独力で顕微鏡を何台も作成し、片っ端から身の回りのものを拡大しては記録していったようです。精子を発見したとき、驚いて、椅子から転がり落ちたという逸話(本当かどうかはわからない)も残っています。そんなに驚くのだから、邪推ながら自分の精子をみたのではないでしょうかね。17世紀のオランダといえば、日本が唯一西洋にむけて貿易をしていた国。好奇心の旺盛な日本人のことですから、早々に顕微鏡を手に入れて片っ端から覗いてみた江戸時代の日本人もいたでしょうね。ところで同じ時期デルフト生まれのもう一人の有名人に、画家のフェルメールがいます。生涯37点のみ現存する画家ですが、日本人にとても人気があり、よくフェルメール展が開かれると、超満員になります。分子生物学者の福岡伸一氏によると、この二人には、決定的証拠はみつかっていないものの、接点があったに違いないとのことです。レーウェンフックの描いた画は大体において素人に毛が生えたような技量を示すものであったようですが、その中に明らかに異質でありかつ見事な写生画が残っているようで、それがフェルメールの手によるものではないかと考察しています。また有名な『天文学者』の絵のモデルはレーウェンフックその人であるという説も有力です。フェルメール、光の天才画家と呼ばれています。暗箱に小さい穴をあけて、外の世界を映し出すカメラ・オブスクーラ(camera obscura)という装置を使用して絵の創作をしたというのは有名な話でもあります。顕微鏡に通じるものがありますね。いずれにしても謎の多いフェルメール。そのことも絵のすばらしさとともに人気を博している理由かもしれませんね。ちなみに小生もフェルメール作品、実際に半数くらいの本物の作品を観てきました。

 

さて精子ですが、今や一般の方でもだれでも簡単にその姿を目にすることができますよ。ネットで購入することができるキットを使用して、スマートフォンのレンズで拡大して観察します。このキット、世界に先駆けて開発したのは、独協医科大学埼玉医療センターリプロダクションセンターの小堀善友先生、ほかならぬ当院にも勤務している先生です。フェルメール作品の『天文学者』の神々しいイメージとは異なり、とても気さくな笑顔の絶えない先生です。

 

上福岡の居酒屋で、焼きあがった銀杏を口にしながら、ぽんしゅ頂きました。ああ美味なるかな。中生代の味がする?山形のスタジアムのイチョウ並木路が臭くないのは、大会前に単にスタッフの方々が銀杏をきれいに採取し、片づけただけなのかもしれませんね。大会関係者の方々、素晴らしい大会運営、この場をお借りして感謝いたします。

 

次号は川越小江戸マラソン記です。