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黄色い声援か、それともランナーズハイか?

2019/07/23

630日夏の夕涼みマラソン大会で、千葉の稲毛海浜公園を雨の中10マイル(16㎞)走ってきました。マラソン大会もいくつか参加して、自前のウェアのみならず大会記念Tシャツも沢山貯まっているものの、黄色のTシャツは残念ながら持ち合わせていないので、この日はウェアを黒で統一し、目立つよう黄色の帽子をかぶって気合を入れることにしました。

電車やバスを乗り継ぎ15時前に現地に到着すると、もうすでにカラフルなウェアや鉢巻きを身につけた老若男女のランナー達で会場はいっぱいです。私のようなおじさんランナーもいるにはいます。この大会で男女それぞれタイム上位50名ずつが8月のメットライフドームの夏フェスに連動したハーフマラソン大会出走権が得られるのですが、まあ平凡な走力の私には縁のないことではあります。さらに1位の賞金が20万円とアマチュア大会としては異例の高額なためガチラン選手も多く参加しているのです。

さて定刻の17時ちょうどスタートしました。4㎞の周回コースを4周します。小ぶりだった雨も3周回目くらいから雨脚が強くなり、もうウェアは汗と雨でずぶ濡れで,体に張り付いて不快極まりないことこの上ない。ところが身に着けているランナーズウオッチでの計測をみると、自分としてはかなりいいペースで走れているのがわかったのです。

苦しくなって最後の4周回目に入るところで、近くで応援してくれている黄色のジャージ姿の若い女性と目が合い、帽子を大きく振ったところ、『キャー、頑張れー。頑張ってー』と甲高い大きな声でエールをいただきました。黄色い声援のおかげか、スーッとそれまでの苦しさが消え、何とも言えない高揚感、いつまでも走っていられるような陶酔感が体を包みました。そのまま元気よくゴール。前回4月の幸手さくらマラソンよりも実に22分も早いタイムでゴール!やったね。いやー久しぶりにいい走りができたぁ。

走り終わって見回すと、夕焼け空に雨の中、自分を含め、ランナー達の立ち姿から、湯気が立っていました。しかし冷静になってランニング大会を振り返ってみると、調子の良いときはいつも12-13㎞地点くらいから、私には高揚感が現れているのです。いわゆる『ランナーズハイ』というものですね。では黄色の女性の『黄色い声援』のおかげだけではなかったのでしょうか。

 

ちなみに何故、女性の甲高い声援のことを黄色で表現するのでしょう?声に色があるかしら。でも音色とか声色とか普通に使いますよね。とそこで少し調べてみました。

所説あるようですが、なかでも有力なのを一つ紹介します。意外にもお経に由来するらしいのです。古く平安時代以前はお経を読むときに現在よりもかなり抑揚をつけたようで、声の高さを示すために経文の文字に色でルビをつけたらしいです。中でも、もっとも高い音を出す文字に黄色をつけたといいます。高い声を黄色と表現するのは古来より文献でいくつもあるようです。

でも何故他の色でなく黄色なのでしょうね。興味あることに、ごく一部の人に、『共感覚』というものがあることが知られています。初めて耳にする方のために少し解説すると、ある感覚が異なる種類の感覚をも生じさせる特殊な能力のことをいいます。その一つに、ある音を聞くと、何らかの色が脳裏に浮かぶという能力です。音楽家としては、ビリージョエルやバイオリニストのパールマンが有名だそうです。こうした共感覚の持ち主の方には甲高い声は黄色に感じる場合があるのだそうです。ネットの情報からで原著を確かめたのではありませんが、京都大学霊長類研究所の研究によると、チンパンジーも高い声を黄色と感じることがわかったということです。どうやって研究したのかな。不思議なもんですね。

 

 

一方、ランナーズハイとは距離で少なくとも5㎞~10㎞以降で起こるらしく、かつその人の限界に近いペースで走り続けないと起きないと言います。これは脳内オピオイドによる現象です。

オピオイドとはエンドルフィンなどモルヒネ様物質ですがエンドルフィンは実にモルヒネの数十倍の鎮痛作用をもちます。脳内で苦痛を和らげるためにオピオイドを分泌し、鎮痛作用を発揮するのですが、同時に幸福感や爽快感が訪れます。ここからしばし難しい医学情報となります。ご容赦ください。

最近の研究によるとさまざまなオピオイド受容体とそれらの作動物質(オピオイド)の織りなす統合的作用は単に痛みを抑えるということではなく、痛み、ストレス、気分などの精妙なバランスをとって、恒常性を保ち、環境と調和して生存できるように機能していると考えれています。またオピオイドとその受容体に関して、女性においてはエストロゲン(女性ホルモンのうち卵胞ホルモン)が高い時期にはμ-オピオイド受容体が増えており、オピオイド作用が増強されます。

一方エストロゲンが低値となる、たとえば月経期や閉経期には痛覚過敏になるらしい。

長距離女子ランナーが、月経期にランニングパフォーマンスが悪くなるのはこのためかもしれない。あるいはマラソンランナーが無月経になるまで練習を積むと骨折などの合併症が起きうると警告されているが、同時にエストロゲンが低下することによるオピオイド系の問題もあるのかもしれないですね。こういう意味でも長距離女子ランナーがピルによる月経調節をおこなう(ドーピングにはならない)ことは理にかなっているのかもしれません。

一方、モルヒネ様物質ですので、中毒性、依存性もあります。体調が悪くてもとりつかれるように走り続け、故障するまで走るのです。走り休むと自分を責め続けたりすることもあります。ジョギング/ランニング依存症です。走りすぎは禁物ですね。ほどほどにしないと。

 

 

ところで、異性(とは限らず同性のこともある)を好きになりときめいて幸せになる感覚もまた、有名な脳内アミンのPEA(フェニルエチルアミン)とならんで脳内麻薬エンドルフィンによるものとのことです。してみると、今回の大会で良い走りができたのは、黄色の女性の黄色い声援とランナーズハイの相乗効果でもってエンドルフィンがたっぷりと分泌されたおかげかもしれません。感謝、感謝!

 

 

走り終えても多くのランナー達がまだ会場に残り、アンバサダーの女性グループと交歓していました。そんな中、私は、静かに公園を離れ、駅前の焼き鳥屋で一人祝杯を上げたのでした。成績をみると『年代別順位で4位と好成績じゃないか』と喜んでいたら、年代別総数はわずか5名のみの参加でした。つまり同年代のモノノフランナーは5名でした。