PGT-A着床前遺伝学的検査
着床前診断とは
染色体異常が原因で生じる特定の病気や流産の回避を目的とする遺伝学的検査です。検査は受精卵の細胞を用いて行います。欧米ではすでに実施されています。
当院は着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)、着床前胚染色体構造異常検査(PGT-SR)において、日本産科婦人科学会臨床倫理監理委員会から承認を得た認定施設です。また当院は、重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-M)の認定施設である、埼玉医科大学病院と連携し、治療・検査を行っております。
※この検査は生まれてくる児の性別を解析するものではありません。
染色体とは
ヒトの細胞には 46本の染色体があり、それぞれ対になっています。そのうち22対(44本)は常染色体、1対(2本)は性染色体と呼ばれます。しかし、時に染色体の数が1本少ない、また1本多い等の数的な変化が生じることがあります(異数性)。
どのような検査か
卵巣刺激後、採卵して得られた卵子に媒精または顕微授精を行い、受精卵(胚)を胚盤胞まで培養します。その中で、検査が可能な胚盤胞の栄養外胚葉(将来胎盤になる部分)から5〜10細胞採取し、遺伝学的検査を行います。採取後、胚盤胞は凍結保存します。結果が出るまでには2週間から4週間ほどかかります。また、検査結果は100%を保証するものではありません。
※基本的に新たに採卵を行って得られた胚が検査対象となります。
着床前胚染色体異数性検査 PGT-A / 着床前胚染色体構造異常検査 PGT-SR
PGT-Aとは
胚の染色体数に異常がないかを調べる検査です。
PGT-SRとは
男女いずれか、もしくは男女ともに染色の構造異常があると判明しているカップルに対して、胚の染色体構造に異常がないかを調べる検査です。
対象者
PGT-A
以下の1),2),3)のいずれかに該当する夫婦とする。
1)反復する体外受精胚移植の不成功の既往を有する不妊症の夫婦。
2)反復する流死産の既往を有する不育症の夫婦。
ただし、1)と2)について夫婦のいずれかに染色体構造異常(均衡型染色体転座など)が確認されている場合を除く。
3)女性が高年齢の不妊症の夫婦。
PGT-SR
・男女いずれか、もしくは男女ともに染色体の構造に異常がある方
※詳しくは下記ページをご覧いただくか、当院スタッフまでご相談ください。
不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・SR) – 公益社団法人 日本産科婦人科学会
検査の流れ(PGT-A/PGT-SR)
- ①当院スタッフへ相談
- ②日本産婦人科学会の動画視聴、動画視聴チェックシートの記入と提出
- ③遺伝専門医/遺伝カウンセラーによる遺伝カウンセリング
- ④ART説明動画の視聴
- ⑤採卵・媒精・顕微授精
-
⑥PGT-A/SR
5~10細胞採取後凍結保存
- ⑦遺伝学的検査
- ⑧結果説明、相談
- ⑨移植可能胚が得られたら胚移植へ
PGT-A/PGT-SR のメリット、デメリット
メリット
- 異数性や構造異常に基づく流産を予防できる
- 出産に至るまでの時間を短縮できる
- 流産による心理的・身体的ダメージを回避できる
デメリット
- 初期胚では検査ができない
- 必ず検査可能な胚盤胞に至るわけではないため、検査ができない場合もある
- 細胞を採取することによる胚への損傷が着床不全や流産、生まれてくる児に影響があることを否定できない
- 細胞を採取して検査に出したとしても、結果そのものが出ない場合がある
- 検査の結果次第では、移植可能な胚が1つもない可能性がある
- 検査の結果が 100%正確というわけではない
※検査で正常と判定された胚を移植したとしても、必ず妊娠に至るわけではなく、また妊娠に至ったとしても流産を完全に回避するわけではありません。
費用
遺伝カウンセリング料金 |
4,400円(税込) |
検査料金(胚盤胞1個あたり) |
88,000円(税込) |
※検査料金とは別に通常のART治療の費用がかかります。詳しくは別紙料金表をご覧ください。
※今後価格変更する可能性がございます。
価格改定の事情をご理解、ご了承いただきますようお願い申しあげます。
PGT-A/PGT-SR治療成績
採卵周期あたりの生検胚獲得周期数
2024
PGT-A | PGT-SR | PGT-M | |
---|---|---|---|
症例数 | 52 | 5 | 13 |
採卵周期数 | 100 | 10 | 18 |
生検胚獲得周期数 | 43 | 10 | 14 |
生検胚獲得周期率 | 43.0% | 100.0% | 77.8% |
2023
PGT-A | PGT-SR | PGT-M | |
---|---|---|---|
症例数 | 47 | 1 | 2 |
採卵周期数 | 83 | 2 | 4 |
生検胚獲得周期数 | 30 | 2 | 3 |
生検胚獲得周期率 | 36.1% | 100.0% | 75.0% |
2022
PGT-A | PGT-SR | |
---|---|---|
症例数 | 48 | – |
採卵周期数 | 95 | – |
生検胚獲得周期数 | 78 | – |
生検胚獲得周期率 | 82.1% | – |
2021
PGT-A | PGT-SR | |
---|---|---|
症例数 | 41 | 2 |
採卵周期数 | 53 | 2 |
生検胚獲得周期数 | 38 | 2 |
生検胚獲得周期率 | 71.7% | 100.0% |
年齢別判定結果
※2021年~2024年の生検胚個数あたりの判定結果割合です
※採卵時の年齢をもとに算出しています
PGT-A | 正二倍体 | モザイク | 異数体 |
---|---|---|---|
34歳以下 | 54.4% | 17.5% | 26.3% |
35-39歳 | 41.2% | 9.4% | 43.5% |
40-42歳 | 23.7% | 10.5% | 65.1% |
43歳以上 | 6.8% | 10.7% | 78.6% |
PGT-SR | 正二倍体 | モザイク | 異数体 |
---|---|---|---|
34歳以下 | 18.5% | 9.2% | 72.3% |
35歳以上 | 16.7% | 0.0% | 83.3% |
妊娠率・生産率
※妊娠率:胎のうが確認できた周期/移植周期
※生産率:生児獲得周期/移植周期
2023
PGT-A | 正二倍体 | モザイク |
---|---|---|
妊娠率 | 57.1%(12/21) | 75.0%(3/4) |
生産率 | 33.3%(7/21) | 50.0%(2/4) |
PGT-SR | 正二倍体 | モザイク |
---|---|---|
妊娠率 | 50.0%(1/2) | 100.0%(1/1) |
生産率 | 50.0%(1/2) | 0.0%(0/1) |
2022
PGT-A | 正二倍体 | モザイク |
---|---|---|
妊娠率 | 59.5%(22/37) | 100.0%(4/4) |
生産率 | 48.6%(18/37) | 100.0%(4/4) |
2021
PGT-A | 正二倍体 | モザイク |
---|---|---|
妊娠率 | 42.9%(3/7) | – |
生産率 | 42.9%(3/7) | – |
PGT-SR | 正二倍体 | モザイク |
---|---|---|
妊娠率 | 100%(2/2) | – |
生産率 | 100%(2/2) | – |